- コアラは毒のあるユーカリだけを食べている。
- そのせいで、一日中ぼんやりしているという説がある。
- もし毒が抜けたら、本当の姿を見せるのかもしれない。
動物園でコアラを見たことがある人なら、一度はこう思ったことがあるはずだ。
「この動物、ずっと寝ているな……」
木の上で丸くなり、目を閉じたままほとんど動かない。起きたと思えば葉っぱを少しかじり、また眠る。
そんな姿から、「世界一やる気のない動物」と冗談交じりに語られることもある。
だが、その様子には昔からある妙な噂がつきまとっている。
コアラは酔っぱらっているという話
コアラの主食はユーカリの葉だ。
しかし、そのユーカリには他の動物があまり口にしない理由がある。
葉には強い毒性を持つ成分が含まれており、多くの動物にとっては食べ続けることが難しい植物だからだ。
それでもコアラだけは平然と食べ続ける。
そのことから生まれたのが、こんな噂である。
「コアラは毒で常に酔っぱらっている。」
いつも眠そうなのも、反応が遅いのも、木から落ちそうなくらいぼんやりしているのも、すべて酒に酔ったような状態だからだというのである。
もちろん酒を飲んでいるわけではない。
しかし、毒によって意識がぼやけた状態で一日を過ごしていると考えれば、あの独特の動きにも妙な説得力が生まれる。
だからコアラは一日に二十時間近く眠るのだ、と語る人もいる。
ユーカリを食べなかったコアラ
この噂には、さらに続きがある。
ある研究者が、コアラをユーカリ以外の食事だけで育てる実験を行ったというのだ。
毒の影響を受けなければ、本来のコアラが見られるのではないか。
そんな発想から始まったという。
そして数か月後。
飼育員たちは信じられない光景を目撃したという。
それまで木の上でじっとしていたコアラが、地面を軽快に駆け回り始めたのである。
枝から枝へ飛び移り、壁をよじ登り、驚くほど素早い動きで人の手をすり抜ける。
のんびりした姿からは想像もできない俊敏さだったという。
捕まえようとしても、まるで遊ばれているかのように逃げ回り、飼育員は振り回されっぱなしだったという話まで残っている。
「コアラは本来、非常に運動能力が高い動物だった。」
そんな結論が出たという人もいる。
もちろん、その研究結果は公表されることはなく、記録も残っていない。
だからこそ、この話は都市の噂として語られ続けている。
眠っているのは本当の姿なのか
現実のコアラは、危険を感じれば木を登ることも走ることもできる。
だから「実はものすごく俊敏」という話も、完全にあり得ないとは言い切れない。
そこへ「ユーカリの毒」という話が加わることで、この噂は妙なリアリティを持つようになった。
もし本当に毒の影響で動きが鈍くなっているだけだとしたら。
私たちが知っているコアラは、本来の姿ではないのかもしれない。
普段は眠そうに見えるあの顔も、毒が抜けた瞬間にはまったく違う表情を見せるのではないか。
そんな想像をすると、動物園で丸くなって眠るコアラを見る目も少し変わってくる。
木の上で欠伸をしているその姿は、本当に「のんびり屋」だからなのか。
それとも、まだ酔いが覚めていないだけなのだろうか。


