- アイドルに執着する危険なストーカー。
- 突然届いた「別れ」のビデオレター。
- 映像の背景に映っていたのは別のアイドルの部屋だった。
ある人気アイドル女優Nには、一人の熱狂的なファンがいた。
ファンというよりも、もはやストーカーと呼ぶべき存在だった。
男は事務所宛てに見合い写真や婚姻届、自分とNとの結婚式を合成した写真などを送り続けていた。
とはいえ脅迫や直接的な接触はなく、一方的に送り付けてくるだけだったため、事務所も警察も積極的には動けなかった。
N自身も気味悪くは思っていたが、「無視するしかない」と考えていた。
そんなある日、その男から一本のビデオテープが届いた。
「今度は何だろう……」
Nはマネージャーと一緒に再生してみた。
画面には見慣れた男の姿が映っている。
男は静かに語り始めた。
どれほどNを愛していたのか。
どれほど真剣に結婚を考えていたのか。
そして最後に、こう言った。
「僕には新しく好きな人ができました。だから別れてください」
思わずNは笑ってしまった。
ようやく終わった。
これで解放される。
だが次の瞬間、男の口から信じられない名前が飛び出した。
その相手は、同じ事務所に所属する人気アイドルSだった。
Nは不安になり、そのビデオをSにも見せることにした。
「気を付けた方がいいよ」
そう言って再生した映像を見ていたSだったが、しばらくすると顔色が変わり始めた。
やがて彼女は震えながら涙を流し始めた。
Nはてっきりストーカーの標的にされた恐怖から泣いているのだと思った。
「大丈夫。今まで私も無視してたし、直接何かされたわけじゃないから」
そう励ますと、Sは首を横に振った。
そして震える声でこう呟いた。
「違うの……」
「この映像……私の部屋なの……」
画面の中で男が座っていた場所。
壁紙の模様。
カーテンの色。
机の傷。
それは間違いなくS自身の部屋だった。
もちろんSは男を部屋に入れた覚えなどない。
鍵も壊されていない。
男がどうやって侵入したのか。
いつ撮影したのか。
そして今もどこかで見ているのか。
誰にも分からなかった。
本当に怖いのは幽霊ではない
この都市伝説は昔から芸能界やネット掲示板で語られているストーカー怪談の一つである。
もちろん実話を裏付ける証拠は存在しない。
しかし、現実にもストーカーが自宅へ侵入した事件は数多く発生している。
だからこそ、この話は幽霊話よりも恐ろしい。
もし突然、知らない人物から映像や写真が送られてきたとき。
そこに写っている背景が、自分しか知らないはずの場所だったとしたら――。
あなたはその夜、安心して眠ることができるだろうか。


