- 息を止めれば、脳に届く酸素が少なくなる。
- ところが、長時間息を止めるフリーダイバーの脳を調べると、意外な変化が起きていた。
- しかも、その変化は記憶に関係する能力とも結びついていた。
「頭を良くしたければ、息を止めろ」
そんなことを言われたら、普通は冗談だと思うだろう。
息を止めれば、当然ながら体に入ってくる酸素は減っていく。特に脳は酸素を必要とするため、長く息を止めれば頭がぼんやりしたり、意識を失ったりすることもある。どう考えても、脳に良いことをしているようには思えない。
ところが、世の中には自分からそれを繰り返している人たちがいる。
息を止め続ける人たち
フリーダイバーと呼ばれる人たちは、タンクなどの呼吸器を使わず、自分の息だけで水中へ潜っていく。潜っている間は、当然息ができない。
しかも一度や二度ではない。長く息を止めることを、何度も繰り返している。普通の感覚なら、少し心配になる。
「そんなことを続けて、脳は大丈夫なのか」
そこで研究者たちは、長いあいだフリーダイビングのトレーニングを続けてきた人たちの脳を調べた。
対象になったのは、経験のある男性フリーダイバー17人。7カ月にわたってトレーニングを行い、その前後で脳の状態を調べた。
比較するため、フリーダイビングをしていない男性20人も調べている。
そして、その結果が少し妙だった。
息を止めていた人の脳で起きていたこと
トレーニングの前と後で脳を比べると、いくつかの場所でつながり方が変わっていた。脳の中で情報をやり取りする経路が、以前とは違う状態になっていたのだ。
それだけなら、「体を鍛えたのだから脳も変わったのだろう」と考えることもできる。
ところが、もう一つ調べていたものがある。
記憶だ。
参加者には、場所と身振りを組み合わせたものを覚えてもらい、その後で、「以前見たもの」なのか、「似ているだけ」なのか、それとも「初めて見るもの」なのかを判断してもらった。
すると、脳の変化と記憶のテストの成績には、気になる関係が見つかった。
記憶に関係する脳の場所と別の場所とのつながりが強く変化した人ほど、似たものを見分けるような記憶の能力が高い傾向があった。
別のつながりについても、変化の大きさと記憶の成績との関係が見つかっている。
つまり、ただ「息を止める人の脳が変わっていた」という話ではない。
息を止める訓練を続けた人たちの脳では、記憶に関係する働きとも結びつく変化が起きていた。
では、息を止めるほど頭が良くなるのか
頭を良くしたければ、息を止めろ。
昔なら笑い話で終わったはずの言葉だ。
ところが、実際に息を止め続けている人の脳を調べると、そこには普通とは違う変化が起きていた。その変化は、記憶とも関係していた。
ならば、本当にそうなのかもしれない。
息を止めるほど、頭は良くなる。

