焼き目で肉汁を閉じ込めることはできない
ざくっと都市伝説
- 強火で焼き目をつけて肉汁閉じ込め。
- 焼き目からも水分が出る。
- 肉汁は閉じ込められない。
強火で焼き目をつけることで肉汁を閉じ込められると19世紀ドイツの科学者リービッヒが提唱。リービッヒは表面を一気に加熱することで水分を通さない膜、殻のようなものが形成され肉片を沸騰する水に入れ、次に温度を下げてとろ火で煮込むと表面のたんぱく質が凝固し、外側の水がしみこまないことを説明している。
同じ理屈で、肉を焼く時もまず表面を焼き目をつければ内側の水分=肉汁が逃げないようになると主張。この考えはたちまち広まり、多くの料理書で書かれるようになった。
しかし、1930年代に行われた簡単な実験でこの考えが間違っていることが実証された。
肉を焼きつけた部分からも水分は出ていくのである。水分が出ているからこそ、鉄板の上でジュージューと水分が蒸発する音がするし、焼き目をつけただけの肉を皿に乗せておけば皿に肉汁が溜まる。表面に焼き目をつけることで肉汁を閉じ込めることはできないのである。
高温で焼き目を付けたことで起こるメイラード反応により肉の表面で褐変反応産物が生じて風味は増す。つまり風味を増す方法として表面を焼き付けるのは正しい。
しかし「風味を増すため」としてではなく「肉汁が逃げないよう」焼き目つけるという話のほうが普及している。