- 社員寮を毎晩走り抜ける謎の男の幽霊。
- 通り過ぎる部屋ごとに悲鳴が響く怪現象。
- 最後にゴールテープを切った瞬間、幽霊は消えた。
これは、ある食品メーカーの社員寮で語り継がれている不思議な話である。
新入社員のAは、入社と同時に会社の寮へ入ることになった。古びた建物ではあったが、特に変わった様子もなく、新生活は順調に始まった。
ところが、入寮して数日後の深夜だった。
突然、隣の部屋から悲鳴が響いた。
驚いて飛び起きたAが耳を澄ませると、壁の中から何かが飛び出してくる。
それはランニングウェアのような格好をした男だった。
男は半透明の姿のまま部屋を突き抜け、反対側の壁へと走り去る。
すると今度は隣の部屋から悲鳴が聞こえた。
さらにその隣、そのまた隣へと悲鳴が連鎖していく。
どうやら男は寮の端から端まで一直線に走り抜けているらしかった。
奇妙な現象は一晩だけでは終わらない。
毎晩決まった時刻になると現れ、部屋を貫通しながら走り続けるのである。
住人たちは寝不足になり、恐怖と苛立ちで限界に近づいていた。
幽霊ランナーの正体
古くから寮に住む社員の話によれば、その男は昔この会社に勤めていた陸上選手だったという。
全国大会を目指していたが、レース直前に事故で命を落としてしまった。
「ゴールできなかったことが心残りだったのではないか」
そんな噂が寮ではささやかれていた。
もちろん真相は誰にも分からない。
だが男の幽霊は、毎晩まるでゴールを目指すかのように一直線に走り続けていた。
ある社員の思いつき
連日の怪現象に悩まされていたAは、あることを思いついた。
もし本当にゴールを求めているのなら、ゴールを作ってやればいいのではないか。
そう考えたAは、寮の一番端の部屋の前に一本のロープを張った。
まるで陸上競技のゴールテープのように。
住人たちは半信半疑だったが、その夜もいつも通り悲鳴が順番に響き始めた。
そして例の男が最後の部屋へ到達した瞬間――。
男は満面の笑みを浮かべたという。
両手を高く掲げ、勢いよくロープを突き破った。
まるで優勝したランナーのような姿だった。
その直後、男の姿は光に包まれ、ふっと消えた。
以来、その幽霊は二度と現れなかったという。
グリコマークとの関係
この話にはさらに続きがある。
実はその会社こそがグリコであり、両手を上げてゴールする有名なランナーのマークは、この幽霊がモデルになったというのである。
もちろん公式にそのような事実は確認されていない。
グリコマークの由来は、健康や躍動感を表現するために考案されたデザインとして知られている。
それでも、深夜の社員寮を走り続けた幽霊ランナーの話は、企業にまつわる怪談として今も語られている。
もしかすると、あのゴールポーズを見るたびに、どこかで走り続けていた誰かの願いを思い出してほしいのかもしれない。


