- 肝試しで廃病院に忍び込んだ高校生たち。
- 記念にカルテを持ち帰ってしまう。
- 帰宅後、病院から電話がかかってくる。
夏の終わり、高校生3人は近所で有名な廃病院へ肝試しに向かった。
その病院は数十年前に閉鎖されて以来、人の気配がなくなった場所だった。しかし地元では「夜になると声が聞こえる」「窓に人影が立つ」など、不気味な噂が絶えなかった。
3人はビデオカメラを回しながら正面玄関をくぐった。
「おじゃましまーす」
薄暗い廊下には壊れた車椅子や古い医療器具が散乱している。緊張しながらも、何も起こらないことに拍子抜けしていた。
やがて一行は元手術室らしき部屋へたどり着く。
そこで古びたカルテの束を発見した。
「記念に持って帰ろうぜ」
軽い気持ちだった。
1人がカルテを鞄へ入れ、3人は病院を後にした。
「おじゃましましたー」
録画された謎の声
その夜、3人は友人の家に集まり、撮影した映像を見ることにした。
画面には病院の入口が映る。
「おじゃましまーす」
すると次の瞬間だった。
「いらっしゃい」
女の声。
誰もそんな言葉を発していない。
3人は思わず顔を見合わせた。
映像は続く。
「思ったより荒れてないな」
「ありがとうございます」
「何も出そうにないじゃん」
「そんなことありませんよ」
明らかに会話が成立していた。
しかも声はどんどん近づいてくるように聞こえる。
誰も笑わなくなった。
病院からの電話
やがて映像は出口へ向かう場面になった。
「おじゃましましたー」
その直後。
「ちょっと待て」
今までとは違う声だった。
低く、重く、怒りを含んだ男の声。
その瞬間、部屋の電話が鳴った。
突然の着信音に全員が飛び上がる。
何度も鳴り続ける電話。
誰も出たくなかったが、ついに1人が受話器を取った。
そして聞こえてきた。
「もしもし。こちら○○病院ですが……」
3人の背筋が凍りつく。
病院は何十年も前に閉鎖されているはずだった。
声は続ける。
「お持ち帰りになられたカルテを返していただけませんでしょうか……」
受話器を持つ手が震えた。
そして最後に、女はこう付け加えたという。
「患者様がお待ちですので……」
電話はそこで切れた。
その後の噂
翌朝、3人は慌てて病院へカルテを返しに行った。
しかし病院は取り壊され、更地になっていたという話もある。
また別の噂では、カルテを返したにもかかわらず、その後も深夜になると病院から電話がかかってきたという。
そして受話器の向こうから聞こえる言葉は毎回同じだった。
「次の診察のお時間です」
もし廃病院で何かを持ち帰ったことがあるなら、今夜の電話には気を付けた方がいいかもしれない。
返却を求めているのは、カルテだけとは限らないのだから――。


